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 Masahiro Ota

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Chartreuse Popper.
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OLD TACKLE

Pawl H. Young + Hardy Orvis + ATH Phillipson + Hardy Scott + Hardy Powell + Scientific Anglers
Fenwick + Pflueger


■Phillipson 3M Epoxite Registered EF86B 8'6"- 4 1/2oz.-#9 1973


フィリプソンロッドを紹介します。
いままでバス用のフライロッドを探し求め、いろんなフライロッドを買いあさりました。その中で最も気に入ってるのがこのグラスロッドです。グラスという材質はウィンストンやスコットのイエローグラスなどに代表されるように、反発力が弱い分、本当に素直に曲がります。大きな魚を掛けた時は、突っ込まれても安定します。グラファイトのようにビンビンとはきませんが、濡れ雑巾でも掛けたようにバットからずっしり曲がってくれます。魚が方向を変えればティップもそっちに向くみたに、まるで魚のいいなりです。こういう素直な特製はグラス特有のものだと思います。このロッドも9番でも、ファイト中は6番のような感覚です。まあ、曲がれば楽しいというもんでもないのですが、スリルがあり、それが楽しいワケです。キャスティングの方は、あくまでスローに”ベローン”とやります。この”ベローン”とは、ラインスピードを上げて飛ばすというよりも、「ラインスピードは遅くてよいから、重いラインを使って、いきなりバットで投げてやる」という感じです。距離よりもポイントに正確に落とすことが重要なバス釣りにおいては、そういう釣り方のほうが効果的であると同時に、デカバグを楽にキャストできます。よく、高番手のグラファイトロッドで"ヒュンヒュン"音を立てて振っている人を見かけますが、空気抵抗の大きいバスバグは、ラインスピードの増加は空気抵抗の増加でもあり、ティペットがヨレて結局大して飛んでいなかったりします。高番手グラスロッドは確かに重く扱いにくいロッドです。しかしそれは従来のグラファイトのような特性を期待するからがっかりするのであって、本来のグラスの特性を理解して使っていると、極めてすばらしいものだと気づくはずです。

ボクがバスバギングにヘビーグラスロッドばかり使うきっかけとなったのは、実はこのフィリプソンロッドと出会ったからに他なりません。野池のバグキャストは、ほぼこのロッドで憶えたといえます。今でこそフェンやバークレイを使ってます(もったいなくて使用を控えています)が、香川に来て10年間はこれがメインのロッドでした。本当に慣れるとどんなことでもできてしまうフレキシビリティ、そしてグリップまで曲がる高番手ロッドは、他のグラスロッドにはなく、写真のように、バットを故意に曲げ、低弾道でオーバーハングにループをねじ込むこともできるのです。

この3M時代のフィリプソンロッドはわずか1〜2年の間しか作られませんでした。あのバスチマーが幻といわれるのもその辺りに理由があるのでしょう。もし3M社がカーボナイト社を買収していなかったら、バスチマーはもっと大量に販売されていたかもしれません。ちなみに右はこのフィリプソンレジスタードモデルに付いていたレジストカードです。このカードにレジストナンバーを書いてビルフィリプソン宛てに送ることになっています。送り先はもはやデンバー・コロラドではなく、ミネソタの3M Companyになっています。フィリプソン社はこのロッドの発売のすぐ翌年1974年にロッドの生産を終了します。ここで不思議に思うのは、3M社がなぜこの場に及んでグラスのニューモデルを発売したかです。しかもご丁寧に2ティップモデルです。3M社はグラファイト技術を持つカーボナイト社を1975年に買収します。ということは、もしかしたら次期カーボンの製造を睨んだスコッチプライの在庫処分だったことも考えられます。だとしたらバスチマーも在庫処分?リックスロッズ社があれだけのブランクの在庫を持っている事を考えると、あながち否定はできません。



■Hardy Marquis #8/9 Multiplier1970年代
さて、このロッドに組み合わせるリールが、ハーディー・マーキスのマルチプライヤーです。ハーディーが米国サイエンティフィック・アングラーズ社( S.A.社)のSYSTEMシリーズ用にこのマーキスを供給していた話は有名ですが、結局 S.A.社は1973年に3M社に買収され、フィリプソンも1972年に同社に買収されています。つまりフィリプソンもS.A.も1973年時点では3M社の傘下にあったわけです。そういう意味でこのロッドもリールも3M社の買収にからんだ製品ということになります。ハーディーにおけるマルチプライヤーモデルは1930年ごろのセントジョージやFeatherweightに付けられていた機能で、マーキスシリーズにおいては8/9番より上のモデルには採用されていません。ギヤ比はそれほど高くはなく、1:1.7程度です。この機能はラインバスケットを使わない僕にとっては、助かる機能です。現在は後述するS.A.社のバスバグテーパー8番を巻いています。ティペットはノットレステーパーの7.5フィート0X。ティペット先端には小型のスナップスイベルを付けて使用しています。

■DIVER. POPPER. HAIR BUG #2
このタックルでは主に#2フック以上の大型のヘアバグやポッパーを使います。それは格好だけではなく、実際デカバグを使ったほうが釣果が上がるからにほかなりません。大型のバグは水面での動きが非常に安定していて、フロータントなどを使わずともずっと浮き続けてくれます。ヒットした時の臨場感もトップウォータープラグ並か、それ以上のものがありますです。デカバグは小バスからランカーバスまでオールマイティにアピールします。




これらの大型のバスバグを使用する上で気をつけているのは、ティペットは0X程度の太目のものを使用することです。僕の場合、さらにスナップスイベルを使用し、ティペットヨレから完全に開放されました。ただ、この場合、小さいフライは使用できません。0Xティペットに#6より小さいフライを使用するのは無理でしょう。レスポンスがかなり悪くなると思います。スナップスイベルも小さいサイズのフライには浮力や姿勢に影響します。要するにこのタックルはデカバグ専用ということです。普通は大は小を兼ねるのですが、大きなバグを投げやすくするためには工夫も必要なんですね。だから小さいフライを使うなら、最初から6番ロッドを使用した方が疲れないし、ずっと効率的で楽しいと思います。

■UMCO P-9 Tackle Box
60-70年代といえば、やはりこのボックスしかないでしょう。そう、子供のころ高くて買えない、一番欲しかったUMCOボックスです。P-9はラインナップ中、最も小さなモデルで、ズボンのベルトループに吊り下げて使うように作られています。アルミ製で、丸みをおびたプレス加工は非常に凝った作りです。

中のトレーは樹脂製。この黒いコンパートメントがルアーの色をよりカラフルに引き立てているような気がします。仕切りもフライロッドルアーにはちょうど良いサイズで1/0とか2/0のバスバグでも余裕をもって収納できます。裏側は、さらに小さな仕切りとなっており、ドロパーニンフやギルサイズのポッパーを入れるのに適しています。



Scientific Anglers Inc. Air Cel BASS BUG TAPER Fly Line 1968

Scientific Anglersとは”最先端アングラー”と言う意味でもあります。このメーカーは1945年の創業当初から、マグネシウム合金製のロッドケースや、Gladding社のナイロンリーダー開発など、先端技術を駆使した製品を開発していたことで知られています。創業者は画像左下のLeon P.Martuchと言う人物です。彼は1950年代に世界初のPVCラインの開発をキッチンで始めます。ナイロンをブレイテッドし、それをコアにPVCを溶かしてコーティングしていたそうです。普通、食事を作る台所でそんなことしたら、家族からクレームが来そうですが。まぁ、それは冗談として、彼は結果的には大成功します。1954年にパテントを取得。同年暮れまでに世界初のPVCフローティングライン”Air Cel”は誕生します。その後、特許権をめぐってGladding社と裁判になりますが、結果的に勝訴。会社は急成長していきます。1962年にはコートランドにライセンス権を許諾。1968年からはSYSTEMシリーズというロッドとリールを発表。いかにも”最先端アングラー”らしい製品ラインナップはフライタックルをシステムとして捉え、組み合わせるという考え方の元祖的な存在と言えるのでしょう。

■FLY-Rodding for Bass(1976),
この本はグラスからグラファイトへの時代の変遷を知ることのできる書籍です。この本の中で著者リビングストンは、当時最新のグラファイトロッドを表紙にあげ、グラファイトは丈夫で硬く、軽い素材で優れている。と述べています。また別の著書「Advanced Bass Tackle and Boat」の中でもグラファイトをロッドのスペックを変える全く新しい素材である。と述べています。さらにグラスロッドの問題点をキャスティング中のバイブレーションにあると指摘しています。これは言いかえれば、ダンピング特性が悪いという意味です。グラスは材質自体にコシがなく、チューブ径で張りを出すしかないため、復元力が弱く、いつまでもベロベロと振動が止まらない傾向があります。初期のものは重さを除けば、まだバンブーの方がマシでした。ただ、この本で言ってるグラスの欠点は初期のグラスではなく、最新のグラスのことをも意味します。特性をバンブーに近づけることが課題であった初期のグラスは、縦繊維エポキサイトのように製法が研究され改良されてもなお、グラファイトの前では低い評価だったということです。グラファイトとグラスの差は非常に大きかったのです。グラスが短命に終わったのも、そんな理由があったのかもしれません。

Fiberglass Fly Rods(1996)
1996年にこのような本が出ています。これはいわゆるノズタルジックな趣としてファイバーグラスロッドを見直した本です。この本のタイトルは「Fiberglass Fly Rods」 ですが、サブタイトルとして「The Evolution of The Modern Fly Rod From Bamboo to Graphite」と書かれています。バンブーからグラファイト・・要するにロッドの歴史そのものです。この本では、その中間的な橋渡しを担い、短命に終わったグラスの存在に焦点を当てた本ともいえます。この本を読むとフライロッドの歴史も世の中の一般的な工業製品と全く同じ道をたどってきたことがわかります。バンブーロッド家内工業→戦後の技術革新→化学繊維の登場→機械化→大量生産→大量消費→企業買収→巨大レジャー産業の台頭。こういう歴史をたどってきた現在、機械化され、コストを追求され生まれてきたものに、僕はどうも魅力を感じません。まあ単なる懐古主義と言ってしまえばそれまでですが、バンブーもグラスも使う喜び、持つ喜びがあり、そういう喜びも釣の楽しみの一つになりつつあります。だから今のグラファイトは性能以前に昔の道具には遠く及んでいないと思います。


■ロッドの表記
Phillipson 3M Epoxite REG. NO.2509 MADE IN U.S.A. EF86B 8'6"- 4 1/2oz.-#9 LINE


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