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 Masahiro Ota

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OLD TACKLE

Pawl H. Young + Hardy Orvis + ATH Phillipson + Hardy Scott + Hardy Powell + Scientific Anglers
Fenwick + Pflueger

グラスロッドといってもいろいろありますが、こと1970年代のグラスほどコレクターの所有欲をかきたてるものはないでしょう。この頃の代表的なグラスロッドというと、ハーディーのJET SET(1972年)、ウィンストンのファイバーグラストラウトロッド(1973〜75年頃のトム・モーガンの初期)、フィリプソンエポキサイト(1972〜1974年までの3M時代)フェンウィックフェラライト(1974年以前のもの)などなど、今でも復刻されるロッドは、ほとんどがこの頃のものです。なぜなのか?まぁ、それは最後にお話しをするとして、まずはその中のひとつ、スコットのパワープライ(1976年のイエローグラス)を紹介します。

■Scott PowR-ply 8.5'-5oz.・WF・8F #87B-1929
1976


スコットは1974年にハリー・ウィルソンによってカリフォルニア州サンフランシスコに設立され、正式な社名は彼の息子の名前を取ってScott PowR-Ply Companyと名づけたのが始まりだそうです。当時はグラス全盛期、カーボンはほとんど普及していない時代であり、スコットはグラスロッドからスタートしたメーカーといえます。創業者ハリー・ウィルソンが設計したマンドレルは当初はラミグラスにブランクの製造を依頼していたとよく言われるのですが、じつはそれは間違いだそうで、最初からカリフォルニア・タックル社の通称"サブレ"と呼ばれるポリエステル樹脂グラスブランクを使用していたそうです。その後スコットは1981年までグラスロッドを製造していますが、1977年ごろからブランクの色が突然茶色に変わっています。両方ともカリフォルニア・タックル社のブランクであることに変わりはないのですが、何らかの事情でプリプレグの色が変更になったようです。なお当時はグラスブランクを製造できるメーカーは限られていたようで、ハーディーやウィンストンはケネディーフィッシャー、オービス、レナードはフィリプソンに、それぞれブランクの供給を受けていたのでOEM的なグラスロッドは今でもたくさん残っています。

Victor Johnson の"Fiberglass Fly Rods"によれば、このイエローグラスは1976年に7シリーズ27アイテムがラインナップされていたことがわかります。その中に"Scott Bass Rods" F-82B(8.0'#7)、F-87B(8'6"#8)、F-89B(8'9"#9)というバス用モデルが存在します。写真のロッドはその中のF-87Bです。ちなみに2004年に30周年記念ロッドとして復刻されたイエローグラスは、この7モデルの中の"Scott Very Light Trout Rods"だと思われます。スペックはF-70(7.0'#3)〜F-84(8'4"#5)までの5アイテムが存在し、ブランクはアンサンド、手書きのデカール、グリップのアクセントに使用されたバール・コルクなど、かなり忠実に再現されていることがわかります。

←ブランクはセミアンサンド。透明感はなし。透明感のあるブランクというのは、当時ポリエステル樹脂に色を混ぜることが可能となったことから始まったそうです。たとえばフェンウィック社の極初期のグラスは、タバコグラス(フェノール樹脂系)と呼ばれる茶色のソリッド色でしたが、1966年ごろからポリエステル樹脂が採用され、お決まりの赤茶色のブランクカラーとなります。さらに1970年ごろからはエポキシ樹脂が採用され、フェングラスと呼ばれるSグラスモデルが登場します。このSグラスはEグラスに比べ、ハイモデュラス化が可能であったため、一部のベイトキャスティングロッドには採用されましたが、フライロッドには採用されませんでした。最終的にSグラスがフライロッドに採用されるのはセージ社においてです。

←ブランクに書かれたスペックは8.5'-5oz.。8フィー6インチを8.5フィートと表示するのはこの頃のスコットの特有の表記方法です。最後の1929はシリアルナンバーだと思われます。


←フェルールはスピゴット
当時のフェルールと言えばフェンウィック(Jim Green)のフェラライトフェルール(いわゆるスリップ・オーバー・フェルール)が有名ですが、このスピゴットもハーディーJET SETの開発担当Jon E TarantinoとウィンストンのMerrickによってGlass to Glass(スピゴットフェルール)という名で考案されています。70年代のグラスロッドは、金属製のフェルールに別れを告げたという意味でかなり完成度が高まったといえます。フェラライトフェルールがパテントを取得したのが1962年、スピゴットはその後の1968年頃にパテントを取得しています。フェンウィックというメーカーはJim Greenの強力な開発力によって、絶えず他のメーカーを一歩リードしていたようです。その一方でイギリスのハーディーは、わざわざアメリカの達人Jon E Tarantinoを広告塔の前面に送り出しています。そしてこの2人の達人による開発競争によってグラスロッドは頂点に達し、そして新たな幕開けが始まります。1973年時点ですでにフェンウィックはカーボンロッドの製造を始めています。

←リールシートはアルミ製のアップロックシートです。エンドにはスクリュー式の小さなコルクキャップが取り付けられ、ボトムにはバール・コルクをあしらうといった懲った造り。ちなみに、この当時のアップロックは、それなりに画期的なものだったと思われます。何しろ一歩先を行くあのフェンウィックでさえ、この頃はまだダウンロックです。ではアップロックはいつ誰が考案したものなのか?ハーディーのJET SETがアップロックだったことを考えると、このシートを考案したのもJon E Tarantinoではないかとボクは思います。


ガイド
ガイドはストリップがカーボロイ、ランニングはごく普通のスネークガイドです。茶色のスレッドで薄くラッピングされ、仕上がりも非常に丁寧。この当時のカーボロイはアランとミルドラムの二つが存在しますが、これはアランと思われます。


■Hardy Marquis #8/9

このロッドにボクが使用するリールも、やはりハーディーのマーキス#8/9です。ボクはこのリールのデザインが非常に気に入ってます。異彩を放つわけでもなくシンプルで、ラインを格納するという当たり前の機能をそのまま形にしたようなリールです。ただし、こちらはマルチプライヤーではなく、日本向けのガンメタフェイスです。このリールがアメリカではSA社のシステムシリーズとして販売されていたことはPhillipsonのコーナーでも書きましたが、やはりオリジナルの製造元はハーディーです。シンプルで飽きないデザインはイギリスでも日本でもアワードを受賞しているとか。ちなみにマーキースはつい最近まで日本でも販売されていましたが、2002年に製造中止になったようです。最終モデルにはディスクタイプのシルバーマーキースと全体がガンメタのモデルが発売されていたようです。写真のマーキースは、それ以前の日本向けモデルで、ドラグももちろんラチェット式のカリカリタイプです。コレに格納するラインは後述するトライアングルテーパーのバスバグライン#8を巻きます。バッキングはダクロン20ポンド。リーダーはノットレスの0Xの7 1/2フィートです。


■GERBUBBL BUG #2
このタックルには、オリジナルを忠実に再現した派手目のガーバブルバグなんかが似合いそうです。もちろんロッドは8番なので、かなりのデカバグまでいけそうです。ガーバブルバグのオリジナルはバルサで作られていたそうで、ボトムとトップはフラットで、テールにかけてChurch-Window(教会の窓)の形にシェイピングするのが本来のパターンだとか。

■Royal Wulff TTBA 8F
ラインは今までいろんなバステーパーを使ってきましたが、今回はRoyal WulffのTTBA8Fを巻いています。このラインは独自の逆三角形テーパーでKUDO賞まで受賞したという、知る人ぞ知るラインです。ある程度の距離からよく飛ぶということで定評のあるラインですが、果たしてバス用はどうか?これは使ってみないとなんともいえません。私の場合、ほとんどフォルスキャストはしないので打ち返しにはこういうラインのほうが有利ではないかと思います。もちろんフォルスキャストを全くしないわけではないですが、大方打ち返しの繰り返しなので、ある程度の距離をおいた打ち込みは、楽になるような気がします。さてどうなのか?ということで、使用したインプレを下記に書きます。

近所の公園にてフルキャスト!
結論から言いますと、このラインは相当パンチがあるラインです。その代わり、ロールキャストなんかはテンでダメなラインです。至近距離からのキャストでも、そんなに扱いにくいとは感じませんでした。徐々にラインを出していくと、25フィート辺りから急激にテーパーがついて細くなり、太い部分が送り出されると、ラインのノリが非常に良くなります。これは普通のウェイトフォワードとは異なる感じで、実際によく飛びます。よく飛ぶというウワサは本当です(笑)。シュート力はかなりありますが、特にグラスのようなスローなバットには向いていると思います。十分にウェイトを溜めてキャストすると、パンチのあるフォワードパワーを体感できます。基本的に振り上げて、振りかざすだけでかなり飛びます。




■SCOTT ROD 1980 AD
1970年代のグラスは決して扱いやすいタックルではありませんが、デカバグを投げるという用途においては非常に優れたロッドであると思われます。硬いグラファイトロッドにおいてはバットを曲げるのはそれなりにたいへんなことですが、グラスは一回振りかざすだけで、ベローンとよく飛んでいきます。限界点は低くてもグラスは決して飛ばないロッドではないのです。
左の画像は1980年ごろのスコットのバスロッドの広告です。
スコットは、まさにそのようなキャストに狙いを絞ってB(バスアクション)モデルをラインナップに設けていたと思われます。要するに同じ番手のロッドがあるのに、なぜバスアクションモデルをわざわざ用意する必要があったのか?ということです。一般的にストリーマーなど を使ったバスのフライフィッシングと純アメリカ産のバスバギングは釣りの次元が大きく異なります。したがってバスアクションモデルを用意するメーカーは、まさに空気抵抗の大きなバスバグをキャストするためにBアクションを用意していたわけです。70年代のバスバギングロッドは非常に貴重な存在です。


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